恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
「あれ、おかしいな」

 泣くまいと思うのに、ほろり、またほろりと、涙があふれ出てしまう。
 どんなに涙を拭っても視界が歪んでしまい、宇田川先生の顔を見られない。

「不安は吐き出したほうがいい。守山ほど強がる患者家族を、俺は見たことがない」

 彼のその言葉で、やっと気がついた。私は今、ただの患者の家族なのだ。
 私も、今まで散々見てきたからわかる。患者の家族が泣くのは、しごく当然のことだ。

「さすが敏腕医師ですね。私の不安も、お見通しなんて」

 私は涙を拭い、そうこぼした。
 今の私は、彼に背中を預けてもらえなくていい、ただの患者家族。そう思ったら、胸につかえていたなにかが、さっと溶けて消えたような心地がした。

 それに安堵してしまったのだろうか。私はなぜか、続けて口を開いていた。

「おばあちゃんの手術は成功しました。でも、再発の可能性が高い症例です。後遺症の心配もある。なのに、私は祖母孝行できなかったなあって」

 言いながら、自嘲の笑みとため息がこぼれた。

「諦めるのは早いんじゃないか? 時子さん、助かったんだろう」

「それは、そうなんですけど……」

 普通なら、今から孝行しますと言えるだろう。だけど、今の私には無理すぎる。

 祖母の願いを叶えたいとは思うけれど、フライトナースとして、まだまだ勉強しなくてはならないことがたくさんある。
 恋や婚活なんて、している暇がない。 

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