恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 頭を上げ、彼に微笑む。
 正直、心はまだ笑える状態じゃない。だけど、宇田川先生にこれ以上迷惑をかけるわけにもいかない。

 しかし、宇田川先生は不満げに眉根を寄せた。

「大丈夫じゃないときは、笑わなくてもいいんじゃないか?」

 彼の言葉に、つい笑顔が崩れてしまった。
 彼はそんな私を気にすることなく、いつもの喜怒哀楽のわからない顔をして淡々と続ける。

「こんな時まで、強がる必要はない。ここには、俺と守山しかいない」

 まるで業務連絡のような、ぶっきらぼうな言い方。だけど私の目からは、ほろりと涙があふれてしまった。

 慌てて涙を服の袖で拭う。彼はそれすら気にする素振りを見せず、さらに続けた。

「守山はいつもそうだ。笑顔で円滑に仕事を進めようとする。患者も救急隊も、俺たちドクターも、いつもそれに助けられている。だが、今は仕事中じゃない」

 宇田川先生がそう言ってくれたのはきっと、私が以前彼に涙を見せてしまったことを覚えているからだろう。
 あの時はつい患者に感情移入してしまい、看護師失格だと思った。

〝今はあの時とは違う〟
 彼はただ、そう事実を伝えてくれているだけだ。

 私が泣いたところで、彼には関係ない。だから、泣きたければ泣けばいい。そういうことなのかもしれない。

 それでも、彼の前で泣きたくはない。宇田川先生に背中を預けてもらえる、立派な看護師でいたい。

 それなのに――。

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