恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 耳がおかしくなってしまったわけではなさそうだ。
 だが、あまりにも唐突な提案に、呆然としてしまう。

 宇田川先生が、私と、結婚……?

 頭の中に疑問符を浮かべていると、彼は淡々と続けた。

「時子さんの意識が戻った時に、守山が信頼できるパートナーと結ばれたと知れば、あの方はもっと生きる気力を出すんじゃないか? それに俺なら、守山の仕事も、彼女の病状もすべて理解している」

 彼の表情からは、相変わらず感情が読めない。
 そんな彼の顔を見ながら、私は頭の中で必死に考えた。

 宇田川先生と結婚したら祖母は喜んでくれる?
 元気になって、もっと長生きしてくれる……?

 祖母の笑みが脳裏に浮かんだが、私はすぐにぶんぶんと頭を振った。

 いや、無理でしょう! 宇田川先生と結婚なんて!!

「宇田川先生にそこまでしていただくなんて、申し訳なさすぎます。私なんかのために、先生の人生を無駄にするわけにはいきません」

 一瞬でも彼の提案を受け入れようとしてしまった自分を一喝し、彼にはっきりとそう告げた。

 しかし、宇田川先生はそんな私をじっと見る。

「守山との結婚は、俺にも利がある。実は、俺も困っていることがあるんだ」

 珍しく、彼の紡ぐ言葉が語尾にかけておぼつかなくなっていく。

「困りごと、ですか?」

 つい聞き返すと、彼は少しだけ眉をひそめて口を開いた。

「父が、宇田川病院に来るようしつこく言ってくるんだ。今、ベイショアERに残る条件として、結婚を提示されている」

< 21 / 144 >

この作品をシェア

pagetop