恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 思わずきょとんとしてしまった。
 宇田川先生があのお金持ち病院の息子であることは知っていたが、まさかそんなことを言われていたなんて。

「でも、どうして条件が結婚なんて――」

「俺に結婚など、できないと思っているからだろう」

 彼は私の言葉を遮ってそう言った。それからため息のようなものをこぼし、続けた。

「父は俺のことを、自分の駒だと考えている。病院を自分の思う通りにしたいから、俺を引き入れようとしているんだ。そして、癪に障るが……父の思っている通り、今の俺が結婚からほど遠い場所にいるのは間違いない」

 非常に頷きがたいが、その通りだ。彼の浮いた話など、これまで一切聞いたことがない。

 彼は神妙な顔になってしまった私を見て、自嘲するようにふっと笑う。
 しかし次の瞬間には、真面目な顔でこちらをじっと見た。

「俺はベイショアERにい続けたい。救急医として、救える命を全部救う。それが、俺の仕事だと思っている」

 いつもの、淡々とした口調。だがそんな口調だからこそ、彼の本気を感じた。

 彼が〝命を救いたい〟と日頃から願っていることは、彼の態度から十分に感じていた。
 だが彼の口からその言葉を聞いたことで、改めて彼の使命感を突きつけられたような気がしたのだ。

 宇田川病院に救急科はない。だからこそ、彼はベイショアERにい続けたいのだろう。

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