恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
「お父様を説得することは、できないんですか?」

「できるなら、とっくにそうしている」

 私の言葉に被せ気味に紡がれた彼の声からは、苛立ちを感じた。

 宇田川先生が、まさかそんなことで困っていたなんて。
 けれど、そんな事情でもなければ、彼が私と結婚しようなんて言うわけないと納得する。

「つまり宇田川先生は、ベイショアERに残りたいから私と結婚したい、と」

 改めて確認するように、彼に尋ねる。

「ああ」

 宇田川先生は、淡々と言った。

「守山は、時子さんに花嫁姿を見せられる。俺は実家を黙らせて、ここで医者を続けられる」

 そこまで言うと、宇田川先生の瞳が鋭く細められる。

「俺と、協力しないか?」

 彼の気迫に、私はごくりと喉を鳴らした。
 彼の提案はつまり、〝愛のない結婚〟をしようということだ。互いの利益のために、偽装の関係になろうということだ。

 宇田川先生は、じっとこちらを見つめ続ける。私はそれに気圧されながらも、必死に頭を巡らせた。

 できることなら、祖母に報いたい。なにより、元気になってもらいたい。
 宇田川先生の言うように、私の花嫁姿を見たら、祖母はきっと元気になってくれるだろう。

 それに、宇田川先生がベイショアERからいなくなるのは痛手だ。
 こんなに救命第一で動く医者を、私は他に知らない。ベイショアER内で疎まれてはいるが、彼は劇的救命の成功率一位の救急医なのだ。

 それでも――。

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