恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる

2 彼は私のために、私は彼のために

 宇田川先生と結婚の約束を交わしてから、一週間が過ぎた。

 すっかり満開になった桜の木々が、静和大学附属病院前のロータリーに静かに花弁を落としている。
 それを見ながら、私はエントランスで彼を待っていた。今日、互いの家族に結婚の挨拶をするのだ。

 いつもは動きやすい服装ばかりの私だが、今日はアイボリー色の膝下丈ワンピースを着てきた。
 ジャケットを羽織っているから寒くはないが、ウエストからふわりと広がるスカートはパンツと異なり心許なくて、なんだかそわそわしてしまう。

 しかもこんな格好で職場前にいるのだから、余計に変な感じだ。

 祖母は三日前にICUを出た。その日から毎日、私は勤務時間外にお見舞いに行っている。
 祖母は予後もよく、もう会話もできる。今はリハビリに励んでいるらしい。

 昨日も、私は仕事終わりに祖母の病室へ寄った。
 紹介したい人がいると伝えると、祖母は皺だらけの顔をさらにしわくちゃにして喜んでくれた。

『よかったじゃない詩音。ついに、花嫁さんになれるのね』

 そう言う祖母の姿に、罪悪感がちくりと胸を刺した。私は結婚するけれど、そこに愛はない。

 今もそのことを思い出してしまい、春のうららかな午後の空気とは反対に、心が重苦しくなる。
 ため息をこぼしそうになったその時、駐車場のほうから宇田川先生がやって来るのが見えた。

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