恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる

1 ありえない提案

 フライト記録を書き終え、私はフライト待機室を出た。

 ここ、ベイショアERは三階建の建物だ。
 一階に受付、救急治療室、ナースステーション。二階と三階は緊急入院用の病床があり、二階に医局、三階にフライト待機室がある。

 ドクターヘリは屋上に格納庫があり、毎日朝八時から日没まで、消防からの要請があればすぐに飛び立てるようになっている。

 フライト待機室が医局やナースステーションから離れた三階にあるのは、そのためだ。
 フライトチームが、出動要請後すぐにヘリコプターへ駆けつけられるようになっている。

 しかし今現在、要請はない。フライトがない場合、フライトナースはベイショアERの補助看護師として勤務する決まりだ。

 ナースバッグに先ほどのフライトで使った用具を補充して、それをヘリに戻したら細かい備品のチェックでもしようか。

 そんなことを考えながら、階段を降りてゆく。

 今日は珍しく、一階が静かだ。救急患者がいないということだから、そのほうが平和でいいけれど。

「守山さん、お疲れ様」

 ナースステーションに着くと、看護主任の横居さんに声をかけられた。

 彼女はこの道一筋の、四十代半ばのシゴデキ看護師だ。
 医師や患者家族への対応が素晴らしいのはもちろんのこと、日夜急患の送られてくるこのベイショアERの看護を取り仕切っている、すごい人なのだ。

 しかも彼女には、歳を感じさせないパワフルさもある。私の憧れの先輩のひとりだ。

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