恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
《こちら浦原(うらはら)救急1、ベイショアERドクターヘリ、どうぞ》

 先に現場に着いた救急隊からの連絡が入る。
 私はヘルメットについているインカムに耳を澄ました。宇田川先生が冷静に対応する。

「こちらベイショアERドクター宇田川。患者情報どうぞ」

 低く冷淡な声。だが、この状況下では聞き取りやすい声でもある。

《患者情報送ります》

 救急隊によると、患者は三十代の男性。意識はあるが、脚を大きな機械に巻き込まれ、不全断裂しているという。

 思ったよりも状況が悪い。

 私は足元のナースバッグに手を伸ばし、宇田川先生に確認して痛み止めの点滴を取り出した。
 揺れるヘリコプターの中、慎重かつ迅速に点滴ラインを準備する。できるだけ、現場での動きを短縮したい。

 着実に、冷静に。ひとつでも多くの命を救うために、自分ができることを着実に行う。

 私がフライトナースになった時に誓ったことだ。

 それからすぐ、目下に広い芝の公園が見えてきた。救急車が止まっている。ランデブーポイントは、あそこだ。

 パイロットと整備士の着陸に関するやりとりを聞きながら、私はポケットに忍ばせたお守りを一度ぎゅっと握った。

 着陸したヘリから、宇田川先生が飛び出す。

「行くぞ、守山」
「はい」

 私も彼に続いて、患者のいる救急車へと急いだ。

 まさかこの後、この無愛想な彼との〝結婚生活〟が始まるなんて思いもせずに――。

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