恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 治療には、どうしてもお金がかかる。命を助けることは、慈善事業じゃない。
 それでも、一度失った命は戻ってこない。助けを求める人がいたら、私は飛んでゆくべきだと思う。

 お父さんと話をしたことで、改めて救急医療に対する気持ちが彼と同じなのだと実感した。

 宇田川先生を見上げると、彼は春の日差しを浴びて、すごくかっこよく見える。
 思わずどきりと胸が鳴ってしまい、私は慌てて彼から視線を落とした。

 すると、お兄さんがくすりと笑う。

「僕は、本当は龍臣に宇田川病院に来てほしいけれど。……でもまあ、応援するよ。ふたりの愛が、本物ならね」

 お兄さんの言葉に先ほどとは別の意味でどきりとしてしまい、はっとそちらを見る。
 目が合うと、お兄さんはおちゃめにウィンクをしてくれた。

 だが次の瞬間、ぞっとした。彼は目元が笑っていないのだ。
 こちらに笑みを向けるお兄さんの瞳は、心の奥底まで見透かすような深い黒色をしている。

 きっと、先ほどのお父さんの残像が残っているだけ。そう思うけれど、彼に恐怖を感じてしまう。

 思わず体がのけ反ってしまい、宇田川先生にしがみつく。すると不意に、なにか温かいものが頬をかすめた。

 え……?

 振り向くと、思っていたよりもずっと近くで宇田川先生と目が合う。

 もしかして、今頬に触れたのって……。

 考え出した途端、先ほどそれが触れたらしい箇所が熱を持つ。急速に、その熱が顔全体に広がってしまう。

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