恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
『私、両親を交通事故で亡くしているんです。だから、誰よりも早く患者のもとに飛んでいけるフライトナースになりました。だけど、さっきの子、助からないかもと思ってしまって……つい』

 俺たちは、その子のその後をまだ知らない。患者を運んだ先が、都内の病院だからだ。

 ベイショアERから飛び立ったドクターヘリは、必ずしも患者をここに連れて帰るわけではない。
 フライトチームや救急隊員が、患者にとって都合のよい、治療方法も適切な受け入れ先を選定する。

 先ほどの子どもは自宅が都内だったため、そちらのほうが患者に都合がよいと判断したのだ。

 詩音は言いながらも、流れそうな涙をこらえ、指の腹で目元を拭っていた。

『患者に共感はしても感情移入はするなと、看護学生時代からあれほど言われていたのに。本当に、なにやってるんだろう』

 詩音は独り言のようにそうこぼしたが、次の瞬間には看護師らしい瞳を俺に向けた。それは、すでにいつもの彼女のものになっていた。

『先ほどの事例の私の動きについて、宇田川先生はどう思われましたか? 点滴処置の後すぐ病院選定のために消防や保護者との連絡に動きましたが、もっといい動き方があったんじゃないかとも思っていて』

 そんな彼女の瞳に射抜かれたように、俺の胸はとくりと震えた。

 彼女は俺と同じだと思っていたが、まったく違った。

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