恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
彼女の目元は真っ赤に腫れており、涙の痕が頬へと伝っているのが見える。
その姿に、ぎょっとしてしまった。
彼女は誰にも聞かれまいと、ここで声を殺して泣いていたのだろう。
俺が立ちすくんでいる間に、詩音はそっと立ち上がった。
それから腕で涙をごしごしと拭い、なんてことないように淡々と言った。
『宇田川先生、まだ上にいらっしゃったんですね。もう、医局に下りられたのかと思っていました』
そんな彼女に、俺はなにも言うことができなかった。
初めて見た、彼女の涙を流す姿。それに動揺してしまったのだ。
『すみません、こんな姿をお見せしてしまって。フライトナース、失格ですね』
そう言うと、彼女はなぜかズボンについているチャック付きのポケットを右手で握り、ふうと息をついた。
彼女のその動きを見て、俺は思い出した。
最後に患者を搬送した時、彼女は同じようにポケットを握っていた。いつものような使命感に燃えた瞳も、どことなく覇気がなかったような気がする。
つい、一時間半ほど前のことだ。
搬送したのは、交通事故に遭った六歳くらいの子ども。駆けつけた親の悲痛な面持ちは、俺の脳裏にも容易に浮かんだ。
『さっきの子どもか?』
そう聞くと、彼女は気まずそうな顔をしながらも、こくりと頷いた。それから、控えめに紡ぎ出す。
その姿に、ぎょっとしてしまった。
彼女は誰にも聞かれまいと、ここで声を殺して泣いていたのだろう。
俺が立ちすくんでいる間に、詩音はそっと立ち上がった。
それから腕で涙をごしごしと拭い、なんてことないように淡々と言った。
『宇田川先生、まだ上にいらっしゃったんですね。もう、医局に下りられたのかと思っていました』
そんな彼女に、俺はなにも言うことができなかった。
初めて見た、彼女の涙を流す姿。それに動揺してしまったのだ。
『すみません、こんな姿をお見せしてしまって。フライトナース、失格ですね』
そう言うと、彼女はなぜかズボンについているチャック付きのポケットを右手で握り、ふうと息をついた。
彼女のその動きを見て、俺は思い出した。
最後に患者を搬送した時、彼女は同じようにポケットを握っていた。いつものような使命感に燃えた瞳も、どことなく覇気がなかったような気がする。
つい、一時間半ほど前のことだ。
搬送したのは、交通事故に遭った六歳くらいの子ども。駆けつけた親の悲痛な面持ちは、俺の脳裏にも容易に浮かんだ。
『さっきの子どもか?』
そう聞くと、彼女は気まずそうな顔をしながらも、こくりと頷いた。それから、控えめに紡ぎ出す。