恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 今日の日勤を無事終えた私は今、自分の部屋でスーツケースを片手に、少し緊張しながら彼を待っている。
 これから、龍臣さんの家に引っ越す予定だ。

 私はもとより、荷物をあまり持っていない。
 病院から近いアパートにひとり暮らしをしているが、いざという時にはすぐに祖母の家に戻れるようにしたいという思いから、家具はあまり揃えておらず、衣類も必要最小限で済ませてきた。

 祖母の家は、病院からバスで十五分ほどの海沿いにある古い一軒家だ。
 祖母と一緒に住んでもいいのだけれど、急な呼び出しなどの際には対応が難しい。
 だから、今までここを借りて住んできた。

 だけど、そんな日々とも今日でお別れだ。

 すでに家具家電は業者に引き取ってもらったから、部屋内にはもうなにもない。

 ちょっとだけ寂しい気持ちになりながら、私は手元の紙袋に目をやった。ここには、両親の写真と思い出の品が入っている。

 龍臣さんは約束の時間の少し前に、我が家にやってきた。

「荷物、本当にこれだけでいいのか?」

 龍臣さんは私のスーツケースを手に取り、運びながら私に聞く。

「はい。あまり物を持っていないですし、家電などはひとり暮らしを始めた頃に買ったものなので、そろそろ買い替えようと思っていたところで。処分できて、ちょうどよかったです」

「そうか」

 龍臣さんは静かにそう言うと、アパートの前に停めていた車のトランクに私のスーツケースをのせる。
 私は助手席に乗り込み、貴重品を入れたバッグと紙袋を膝にのせた。

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