恋と結婚は別物です! 偽装結婚のはずなのに、強気なナースはフライトドクターの一途な愛に溶かされる
 彼の言動に、心を乱されないように。それでいて、彼のために。

 そう心に誓ってから、二日後。
 いつものようにERナースとして動いていると、芦田先生が私を呼んでいると横居さんに言われた。

「抜けていいから、行ってきなさい」

 深刻そうな顔の横居さんに、嫌な予感が胸をよぎる。

 急いで祖母の病室へ向かい、その扉を開く。
 目に飛び込んできたのは、ベッドの両脇に佇むナースふたりと、ベッドの横の椅子に腰掛ける芦田先生の姿だ。
 三人はこちらを見て、気まずそうに眉をひそめる。

「おばあちゃんは……」

 耳元で大きく打ちつける脈を気にしないようにして、口を開いた。
 しかし、芦田先生は静かに首を横に振る。
 視線を横に動かす。祖母の心動を映すはずの心電図が、横まっすぐに線を描いていた。

「う……そ…………」

 私は、その場によろよろと座り込んでしまった。

 昨日まで、あんなに元気だったのに。
 私の花嫁姿を見るんだって、リハビリを頑張っていたのに。

 なんとか立ち上がり、ベッドに寝転んでいる祖母の顔を覗き込む。
 穏やかで優しい、いつもの寝顔がそこにあった。

< 97 / 144 >

この作品をシェア

pagetop