ぼくと世界とキミ
「お前は俺に……セリアを殺せって言うのか?」

俺の叫ぶ様な問い掛けに、セレスは悲しそうに瞳を揺らし俺を見つめた。

「この俺にセリアを殺せって言うのかよ!!」

胸に手を当てたまま嘲笑を浮かべると、鋭い視線をセレスに向ける。

……出来る筈がない。

だってセリアは俺の何より大切なモノ。

何よりも、誰よりも守りたい大切な人。

それを俺の手で……殺す?

「それが貴方の運命です」

セレスは冷たくそう答えると、静かに俺を見つめた。

「ふざけんじゃねぇ!!俺はこんな事のために勇者になったんじゃない!!何も失いたくなくて、大切なモノを守りたくて!!それなのに!!」

「貴方がやらねば世界は終わる」

「俺にはできない!!」

ギュッと拳を握り締め、ブンブンと首を横に振って答える。

「いいえ、貴方は必ず世界を救う。セリア様の見た……未来の通りに」

「嫌だ!!絶対に嫌だ!!」

駄々をこねる子供の様に、千切れるほどに首を横に振り続けた。

強く握り締めた拳から血が流れ、それはポタポタと滴り落ち、白い世界を赤く染める。
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