ぼくと世界とキミ

街を出て何も無い草原を馬は走る。

独特のリズムに揺られながらそっと横を走る彼を見つめた。

「そう言えば王様には何も言わなくていいの?俺、挨拶もしなかったけど……」

「王は病で寝込んでいる。もう……長くはない。この国を動かしているのは《俺》……という事だな」

そう言ってジルは笑いながら、でも……少しだけ寂しそうな顔をする。

「ふ~ん」

それ以上、深くは聞かない事にした。

どうやらジルは家族とあんまり上手くいっていなかったらしい。

……ジルも色々と大変なんだな。

「メルキアまではどの位かかるの?」

沈んだ空気を変えようと話題を変えてみる。

「途中に休みを入れながら……七日位だな」

「七日かぁ……遠いな」

この旅の行方を考え……ほんの少し不安になる。

「今回は馬もあるし、流石のお前でも平気だろう?」

「はいはい、そ~ですね!!」

ジルの皮肉たっぷりな言葉に、眉を顰めたまま舌打ちを返した。

……この嫌味さえなければいい奴だと思えるのに。

「少し急ぐぞ」

ジルはむくれる俺を見て面白そうに笑うと、馬の走る速度を上げた。

ジルの馬は美しく草原を駆け、そしてドンドンと距離を離されて行く。

「なっ!?待てよ!!」

……いつも置いていかれている気がする。

少し情けなくなりながらも、急いでジルの後を追って行った。
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