ぼくと世界とキミ
長い廊下を駆け抜け城の外に出ると、そこにジルは居た。
あの執事の男に兵士達、それからこの城の使用人達が総出で見送ってくれるらしい。
それから人のごった返すその中に……黒と茶色の二頭の馬の姿が見えた。
手入れの行き届いている綺麗で逞しい馬だ。
その馬達にはすでに鞍や手綱が準備されていて、いつでも出発できる準備が出来ているらしい。
「馬には乗れるな?」
そう言ってジルは少し小馬鹿にした様な笑みを浮かべた首を傾げた。
「……まぁ、人並みには」
「十分だ」
ジルのその答えに少しムッとして睨み返すと、ジルはクスリと笑いながら馬に跨った。
それは豪くサマになっていて……流石は《皇子様》といったところか。
遠い昔の幼い記憶が頭を過り、ハンッと心の中で毒づくとジルと同じ様に馬に跨った。
「よろしくな」
そう言ってポンポンと首を優しく撫でると、馬は嬉しそうに嘶いた。
「お気を付けて」
「ああ。城を頼む」
執事の男にジルは小さく頷いて返すと、手綱を引いた。
「出発!!」
その俺の掛け声と共に馬が歩き出し、皆が深々と頭を下げる長い石畳の道を真っ直ぐに進んで行った。