ぼくと世界とキミ

「流石……ロイ様ですね」

後ろから声が聞こえそっと振り向くと、そこにはクスクスと笑う中年の男が立っていた。

白髪の交じった短い髪に、少し伸びたヒゲ。

「トドメ刺したのは俺じゃないけどね。それに『様』はやめてくれって言ってるだろ……おっちゃん」

少し困った顔をして男を見ると、男はワザとらしく首を横に振って見せた。

「いえいえ。ロイ様を呼び捨てなどにはできませんよ」

「……でもさぁ~」

そう言って眉を顰めて見せると、男はまた可笑しそうにクスクスと笑う。

この村に来て……もう半年。

毎日の様に繰り返される会話。

いつまでも優しい男。

……俺はこの生活に安らぎを感じている。

ここに居ればいつかは過去の事など忘れられる日が来る。

辛かった事も、悲しかった事も、恐怖も絶望も……ここに居れば薄らいでいく気がした。
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