ぼくと世界とキミ

「ロイ様!!」

また後ろから声を掛けられ振り向くと、そこにはさっき魔物に襲われていた少女が立っていた。

「魔物を倒してくれてありがとう!!」

少し解れたワンピースを着たその小さな少女はそう言うと、俺を見上げて眩しい笑みを浮かべる。

……実際倒したのはキミのお母さんだけどね。

心の中でそう呟いてクスクスと笑うと、少女はつられて可愛らしい笑顔になった。

「これ……お礼です!!」

そう言って少女が差し出した小さな手の上には、白い卵がちょこんと乗っている。

それから……可愛らしいピンクの花。

笑顔で真っ直ぐに手を差し出す少女は、同じ年頃の女の子に比べて大分小さく見えた。

その少女の姿に……微かに胸が痛む。

「ありがとう。じゃあ、こっちだけ貰っとくよ」

そう言って少女の手からピンクの花を受け取った。

「……え?」

不思議そうに見上げる少女にニヤリと笑って見せる。

「卵はお前が食えよ」

そう言って少女の頭をワシャワシャと撫でると、少女は窺う様に俺を見上げた。

「……いいの?」

その問いかけに大きく頷いて返すと、少女は嬉しそうに子供らしい無邪気な笑顔を浮かべる。

「ありがとうロイ様!!……お母さんが待ってるからまたね!!」

そう言って少女はブンブンと千切れそうな程に手を振ると、母親の元へと走って行った。

「……ありがとう……か」

可愛いピンクの花を眺めながら小さく呟く。

その様子を見ていた男はほんの少し悲しそうな顔をするが、すぐに優しい笑みを浮かべた。

「さぁ、朝ご飯にしましょうか」

「……おう!!」

男に大きく返事を返すと……そのまま二人で家へと戻った。
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