政略結婚ですが御曹司に甘く囲い込まれ溺愛されています
父とも親しい、大手グループ企業の若き社長。

その人は、にっこりと自然に微笑んでいた。

さっきまで向けられていた他の男性たちの視線とは違う。

打算でも、評価でもない。

ただ、まっすぐに見てくる。

(……なんだろう、この人)

少しだけ、息がしやすくなる。

優斗さんは、グラスを軽く持ち上げながら、私に一歩だけ近づいた。

「はじめまして。藤井優斗です」

その距離は近いのに、不思議と圧迫感がない。

でも――なぜか目を逸らせない。

「村瀬澄佳です……」

名乗ると、彼の視線が少しだけ柔らいだ。

「澄佳さん」

名前を呼ばれただけなのに、胸が小さく跳ねる。

「こういう場、あまり得意じゃなさそうですね」

見透かされたみたいで、思わず驚く。

「……分かりますか?」

「ええ。少しだけ」

そう言って、また優しく笑う。

その笑顔に、胸の奥がざわめいた。
< 3 / 19 >

この作品をシェア

pagetop