まことしやかな恋
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耳が飽きるほど与えられた〝冷静沈着〟という褒め言葉を、もう二度と贈呈されなくなる朝だった。
肌を突き刺すような水圧の強いシャワーを頭から浴びたまま、困惑した自分と向かい合う。鏡の前、ある一点を見つめながら、まとまらない思考で言葉を絞り出した。
「──なにこれ、なにこれ」
壊れかけのロボットくらい酷い有様だ。
今まで学習して覚えてきた単語は、どこにいってしまったのやら。深刻なエラーを起こした頭が同じ言葉だけを繰り返させる。
きっと、私を知る人間は笑うはずだ。こんなに吃驚することができたんだ、と。
完全に、驚いて、動揺して、パニック状態である。
「いや、は、なんなのこれ……っ」
浴室の曇った鏡を何度も濡れた手で拭いた。まだらに開けた視界は、歪んだ像を映してまた白く曇っていく。消えてくれないかと、一縷の望みをかけて擦ってみた。
だが、やはり、ある。
心臓が揺れる場所。薄らとピンク色に染まった痣のようなソレは、綺麗なハートの形をしていた。
「(……この悪趣味なハートマークは、なに?)」
内出血の痣にしては、くっきりとしたハートだ。怪我をするにしても胸部をぶつけた記憶はなく、淡く色付いた桃のようなソレは酷く不自然だ。
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