まことしやかな恋
待ちに待った初デートの日。
あれこれと考え抜いた計画は上手くいき、段取りよく進んでいた。
ころころと表情を変える葵子は楽しそうで、俺も最高に楽しかった。ジュエリーショップに不慣れでピアスの値段に驚愕してる顔も可愛くて参った。
だってさ、俺が下心で買ったんだよ? お互いの色を身につけられるように。
持ち物、食べ物、葵子を構成する全てに俺は干渉したい。資本となる身体の内側、外側、隅々まで自分の手で整えたい。
俺なしで生きていけなくなればいい、とすら思っている。
だからかな。
夢のような甘い時間は、来訪者の出現によって儚く終わってしまった。
「──アンタの恋人にキスされて、運命の人にされて、困ってんのは俺の方なんだけど?」
「残念だけど、アンタの恋人、アンタと運命じゃねぇよ。無駄な時間だったね、ご愁傷さまー」
目を瞑りたくなる現実を突きつけられ、頭が真っ白になる。ハッピーエンドなんてない。幸せのまま終われるのは、まことしやかな物語の中だけだ。
どうせ、終わるなら──……。
「(傷つく前に、自分の手で終わりを迎えたい)」
俺は運命を背に、逃げ出した。