まことしやかな恋

 恋人になれた朝。

 俺は張り切りすぎた朝食を前に、目覚めた葵子が昨日の会話全部忘れていたらどうしよう、付き合うの後悔していたらどうしよう、と不安になった。

 けど、寝起きでもふもふ大爆発の葵子は恋人の距離感に戸惑いながらも、きちんと俺を彼氏として認識してるようで。

 うっかり一緒に住みたいという本音が漏れてしまったが、鈍い葵子にあえなくスルーされた。

 尽くすのが好きな俺と、世話を焼かれたい葵子、絶対に相性がいいんだけどな〜。

 その後も、葵子が拒否しないのをいいことに、俺は言いくるめて一緒に駅まで向かった。欲が出て、合鍵を使ってと去り際に言葉を残してみたら、葵子は夜ご飯を用意して部屋で待っててくれて心底浮かれた。

 恋人らしい距離感、躊躇なく甘える姿。

 ふわふわの髪を乾かす時間を至福に感じながら、俺は自分をもっと意識させるべく計画を練った。


「(そうだ、デートに誘おう! 再来週の週末を丸々もらって、ずっと一緒に過ごして……)」


 脳内で初デートの計画を立てる。

 勝手に楽しみになってきて、またさりげなく同棲を匂わせてみれば、流石の葵子も気づいたらしく恥ずかしくなった。俺の欲深さは知られたくないな。

 おやすみのキスをして、腕の中で眠る恋人を抱きしめた。







 その日の深夜、一通の連絡。

 気の所為かと思ったが、葵子の様子が少し違った答え合わせができてしまった。

 ──〝鞍馬 大和〟

 俺の葵子を奪おうとする害虫は多い。

 恋人になれたはずなのに、不安は消えなくて。暗闇から逃げるように、目を閉じた。
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