まことしやかな恋
疑われても泰然としろ。変な痣だと主張し続けろ。
「……本気で言ってる?」
「本気も何も、言ったことが事実だから」
「いーや、嘘だね」
「なにを持って嘘だと言い切ってんの? 嗣海が知らない私の秘密なんてごまんとある」
「……」
「私のこと、知ったかぶりしないで」
言いすぎたと気づいた時には、手遅れだった。
この場を凌ぐための強い語尾が、いつのまにか嘘と断言した相手を言い負かすための熱を持っていて、その熱は相手の感情まで焦がした。
──トン。押し倒された背中がマットレスに沈む。
「はは、寝惚けてるにしても嘘がお粗末だな。この俺が知らないとでも? お前よりずっと抜け目なく生きてきてるんだよ? 見くびってもらっちゃ困る」
一息に吐かれた言葉に、平常心が瓦解した。
私を見下ろしている優美な男は、怒りを笑顔で内包していた。カーテンの隙間から漏れる陽光が、私たちの間に眩い白磁色の線を引く。
安易に煽った末路は、最悪を更新する。
「その乙に澄ました態度、崩してやりたいって昔から思ってたよ」
性格の悪い、甘い笑みが落ちてきた。