まことしやかな恋

 避けるだろうと全力を込めた蹴りが、嗣海の腹部にめり込んだ。軽く咳き込む姿になけなしの罪悪感が湧くも、謝ることはしなかった。

 傷ついた心に言い訳して、私も馬鹿みたい。


「大嫌い」


 子供じみた言葉をぶつける。

 意味がないとわかっていても、同じ傷を負ってほしくて幼稚な刃を振るった。


「……嗣海なんか、大っ嫌い」


 嗣海の暗くなった瞳に、私が反射している。痛切が滲んだ双眼は、傷ついてほしい自分の願望なのか。手が届く距離にいるのに、ひどく遠い。


「帰って」


 突き放すように告げられた嗣海は、一拍置いてから静かに立ち上がった。なんの言葉も残さずに、部屋を出ていく。

 ひとりぼっちの部屋、膝を抱えて蹲った。


「ばかみたい……」


 ねえ、運命に翻弄された結果がこれ? 

 友情が壊れるくらいなら、運命なんていらないよ。

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