まことしやかな恋

 それにしても、なんで嗣海は運命だと認めさせたがるんだ? 私と運命なんて、嗣海にしてもいい迷惑なはず。

 ふと唇が迫ってきて、吐息がかかった。

 その甘やかな唇が重なる寸前──、私は訊く。


「どうして、運命を選ぶの」


 暫し、沈黙が漂った。

 嗣海の口から返ってきたのは、


「全部運命で片付けられる相手だよ。めんどくさくなくて最高でしょ」


 呆れるほどに、最低な理由だった。

 頭と心が、冷水をかけられたみたいに熱を失っていく。相手にするのも馬鹿らしいと、怒る気力すら消えてしまった。

 腐れ縁でも、縁は縁。

 少なくとも、私は、大事にしていたのに。


「……退いて」


 声色に、失望が乗る。

 眉ひとつ動かさない嗣海が、手首の拘束を強めてきた。痛みが走り、穏やかな笑みが一瞬綻んだように見えたが、気の所為だ。期待はしない。


「離して」

「……なんで?」

「他人に気安く触れられたくない」

「……運命は他人じゃないよ」

「たとえ運命でも、他人でしょ」


 運命ですべてが片付くなら、こんなに虚しい気持ちになってない。

 それに、友人としての信用はなくなった。自ら築いてきた関係を烏有に帰す馬鹿は、もう他人でいい。
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