まことしやかな恋
──初秋の候。
古典を担当している教師は教科書を片手に、昼食後の血糖値スパイクで微睡んでいる生徒たちの間を規則的に歩いて音読している。窓は開け放たれ、秋のそよぎで地味な色のカーテンが踊っていた。
無防備な窓から校庭を見下ろすと、ジャージ姿の生徒がボールを追いかけて走り回っている。
「(……あー、特進Aクラス)」
暇潰しに視線を向けたことを後悔した。
私立高校の特進クラスと聞くと聞こえはいいが、実情はガリ勉と優等生ぶったクソの巣窟。特に後者の方が最悪だった。
裕福な家庭が集まり、偏差値も高く、進学実績も申し分ない学校は、外面ばかり気にしている。
ただ、綺麗に包装されたところで、中身は矜持だけが一丁前の未成年。親に守られて大人に管理されているのに、気づいていなくて哀れだ。
課題のプリントを忘れたと先生が教室を出ていく。途端に談笑をはじめる生徒たちが、校庭に視線を向けてワンオクターブ声を高くした。
「……えっ! 嗣海くんいる〜!」
「生徒会軍団だ。生徒会って性格はアレだけど、みんなビジュはいいよね」
「だね〜。でも嗣海くん、特進の生徒会メンバーと一緒にはいるけど、悪いことはしてないっぽいよ?」
「じゃあ、性格のいいイケメン?」
「そうっ!」
彼女たちの声に反応した男子生徒も「マジで雨宮は良い奴」と褒め、共感が広がっていく。非の打ち所がない存在として讃えられ、誰も悪く言わない。
「(……本気?)」
完璧ほど怖いものはないでしょ。
私だけが訝しむ空間。心地が悪いと眉を寄せた。