まことしやかな恋
hate you

 高校生は元気の塊だ。

 朝、電車で出勤するだけで疲れ果ててる自分と違い、活力に溢れている。十年前の私はあんなにきびきびと登校していただろうか? いや、してない。遅刻三昧だった。

 新校舎が綺麗で有名な公立高校。職員用出入口から校内に入り、羽柴と書かれた名札を首からぶら下げながら事務員の人と軽く挨拶を交わして保健室に向かう。

 解錠して、まず行うのは換気だ。養護教諭である自分にとって一日の起点となる行為。朝の空気が消毒液とリネンに混ざり、ふわりと鼻腔を掠めた。

 白衣に袖を通し、三台分のベッドを整える。備品の確認をし、消耗の早い絆創膏やコットンを補充してようやく一息ついた。


「ふ〜……」


 椅子に凭れ、僅かに鈍痛の残るこめかみを押さえながら保健日誌を開く。

 ここまでは、慣れたサイクルだ。凝り固まった腕の筋肉を解すよう伸びをする。

 視界にちらつくのは、健康診断の再検査の紙。無意識に舌打ちを零れたのは、私の心労も加味して許してほしい。

 保健室の先生はラクだと大概思われるかもしれないが、普通に毎日忙しいのだ。生徒だけならまだしも職員の健康管理まで任されたりするから意味がわからない。


「校務分掌通りに回るなら苦労しないけど、無理だろうし」


 諦めの気持ちを込めて小さくぼやけば、一限のチャイムがなった。
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