まことしやかな恋
時間の流れがゆったりとしている保健室。登校時のざわめきはなくなり、鳥の囀る声や風が窓を揺らす些細な音が、日常のメロディーを奏でる。
朝の憂鬱が払拭されて喜ばしい。
自前のマグカップにインスタントの珈琲を入れて湯を注ぎ、火傷しないよう冷ましながら口をつけた。喉を苦味が伝い、二日酔いの頭に染みる。
養護教諭という仕事をしている以上、飲み過ぎには気をつけていたのに、それもこれも全てあの性悪男のせいだ。
腹立たしいが、性悪男とは友人でもある。それこそ何年も交流が途切れないくらいには、気を許せる相手だった。
行きつけのバーでとりとめのない会話に花を咲かせたり、整骨院の医院長でもあるアイツに肩こりを解消してもらったり、海外ドラマ一気見に付き合ってもらったり。
友人と言って差し支えないくらいには、まあ交流していた。
それが、どうしてこんなことになる。
「──こんこん! しばちゃーん! ぶっけた!」
「はい、どうぞ」
入室のノックを口頭でして、快活な足音と共に飛び込んできたのは、ジャージ姿の男子生徒と何人かの女子生徒。
気持ちを切り替えるように深呼吸して、私は椅子から立ち上がった。