まことしやかな恋
miss you
妖しい光が、アルコールを照らす。
久しぶりに足を運んだバーで、マスターは艶然と微笑を向けてきた。相変わらず人外の雰囲気を纏い、カウンターの奥に存在している。怖。
「常連がふたりも一ヶ月近く顔を見せなくて、乾涸びそうだったよ」
「一杯どうぞ」
「葵子ちゃんと嗣海くんが好きそうなメニューを考えて、作って、連絡までしたのに。悲しいな」
「……お好きなだけ飲んでください」
よよよ、と泣くふりまでするマスターは強かだ。
けど、連絡を無視していたのも事実で、今日だけは強気に出れない。マスター特製、色んなきのこ入り和風リゾットが美味である。
木のスプーンを使って口元に運べば、優しい味の炭水化物が疲れた胃に染みた。空腹時に流し込んだ微量のアルコールも薄まった気がする。
週の始まりに酔いたくはないし、アルコホリックのマスターを反面教師にして自制しないと。
「……何か話したそうだね。お悩み相談室でも開こうか?」
「……食べてからで」
「うん、ゆっくり噛んで食べてね」
美味しい食事を与えられ、見守られ、悩みを見抜かれている。嗣海に毒された脳が、懐柔・洗脳・弱点把握、と性格の悪い感想を綴った。
あー、やだ。嗣海に感化されて、善意を善意で受け取れなくなってる。