第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
一章 婚活に苦戦中

「千咲、来月有給取って彼と旅行に行くんでしょ? 行先はもう決めたの?」

 その質問をされたのは、昼食後に楠木千咲(くすのきちさき)が、お土産でもらったレーズンサンドに手を伸ばしたタイミングだった。

「それはなくなったの。実は昨日の夜、振られたんだ」

 千咲は正面の席に座る親友、細田彩香(ほそださいか)に、気まずさを感じながら返事をした。

 彩香の顔に、たちまち驚愕が広がっていく。

「うそっ……本当なの?」
「本当。今回もまた、だめだった」

 千咲の元カレ市川駿介(いちかわしゅんすけ)は同僚だが、親しくなったのは彩香が主宰した飲み会の席だった。それもあって彼女は千咲と駿介が付き合うと報告すると喜び応援してくれていた。

「どうして急に?」
「好きな人ができたんだって。もう付き合ってる感じだった」
「そんな酷い……千咲、大丈夫?」

 心配そうな彩香に、千咲は淡々頷いた。

「少し前からなんとなく気づいていて、覚悟はしていたから」

 千咲はとある事情で結婚願望が強い。

 けれど恋人から一方的に振られるのはこれで三連続だ。関係が深くなると相手が去って行ってしまう。
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