第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 呼びかけると澄春が伏せていた目を上げた。澄んだ瞳と視線が重なりどきりとする。

「あ、あの……聞きたいことがあります」
「なに?」
「……今日、ここに泊まるんですか?」

 澄春が瞬きをした。意外なものを発見したときのような、面白しろそうな興味深そうな目で千咲を見つめる。

「泊まっていきたいのか?」
「え?」

 質問を返されてしまった。

「泊まりたいなら構わないが。着替えは届けさせる」

 澄春の言葉に千咲は呆気にとられた。

(え? 泊まる予定じゃなかったの?)

「あの、もしかして、ただ食事をするためにこの部屋を用意したんですか?」
「そうだけど」

 淡々と返されて、千咲は居たたまれなくなった。

(勘違いだった! ……恥ずかしすぎる)

 彼はまったくその気はなかったのに、ひとり慌てふためいて馬鹿みたいだ。自意識過剰すぎる。

「どうしかしたのか?」

 千咲の葛藤など知るはずもない澄春の瞳には、純粋な疑問が浮かんでいる。

「……いえ、ちょっと勘違いをしただけです。あの泊まらなくていいです」
「遠慮はしなくていい。気に入ったのなら滞在していこう」
「いえ、本当に大丈夫です。料理美味しそうですね。冷めないうちに食べましょう」
「本当か?」

 澄春が千咲をじっと見つめる。

「ほ、本当です」
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