第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 駿介は弾かれたように椅子から立ち上がると、澄春に頭を下げた。

「すみません、急いでいますので、ここで失礼します!」

 彼は澄春の返事を待たず、逃げるように去っていく。

 千咲は呆気に取られてしまった。

(澄春さんと親しくなって、出世したいんじゃなかったの?)

「さっきまで、あんなに強気だったのに」

 彩香も呆れてしまっていた。

 居酒屋を出た後、まずは彩香を駅まで送ることになった。

「送っていただきありがとうございます。お疲れさまでした!」

 彩香は澄春に礼儀正しい挨拶をしたあと、千咲の耳元で「がんばって」と囁いた。

 彩香が駅に入っていくのを見送ってから、車を出す。

「細田さんと仲がいいんだな」
「うん。なんでも話せる私にとって唯一の親友かな」
「会社の愚痴も言い合ってる?」
「少しだけね」

 冗談めかした澄春の言葉に、千咲はいたずらがばれたように微笑む。

「……さっきの市川駿介だけど」

 しばらくすると、澄春が深刻そうに口を開いた。

「ただの同僚じゃないよな?」
「え?」
「態度に出てた」

 千咲は澄春の鋭さに驚いた。

 元カレだとは言いたくなかった。短い間の関係だし、関係も深くなかった。変な誤解はされたくない。

 けれど今黙っていて、後からばれたらもっと揉めるかもしれない。
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