第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 千咲は信じられない思いで駿介を見た。

(なんでそんな勘違いをしているの?)

 千咲は駿介のことなどとっくに忘れていたというのに。

「それは被害妄想だよ。私はもう本当に気にしてないから。とにかく離して? あまりしつこいと本当に社長に報告するよ」

 このままでは埒が明かないと澄春の名前を出すと、駿介の手からようやく力が抜けた。

 千咲は乱れた服を直しながら、改めて告げる。

「私は初めから駿介を恨んでいないよ。もう終わったことだって割り切ってるし、駿介だけが悪かったわけじゃないと思ってるから。それに私たちの関係は彩香以外には話していないの。だから変な誤解しないで」

 駿介の顔色は悪く、何か思い詰めているようでもあった。

 しばらくすると駿介が足早に去っていった。

 千咲はようやく警戒を解き、脱力して壁に寄りかかった。

「今の、なんだったの……」

 元カレの不審な行動に頭が痛い。

 カフェラテを買う時間もなくなってしまった。

 千咲は憂鬱な気持ちのまま室内階段を出て、エレベーターホールに向かった。
 
 昼休み。千咲は彩香に駿介の件を相談した。

「いきなり乱暴をしてくるとは思わなかったよ。何を考えてるのか……」
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