第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました

 ***

 澄春はシンポジウム会場に到着してすぐに異変に気付いた澄春は、すぐに正樹に連絡をした。

『千咲の安全確保を最優先で』

 あんな写真が出回ってしまっては、外を歩くのすらも不安になるはずだ。

 案の定、電話の向こうの千咲の声は、参っているようだった。

『澄春さん、不倫疑惑って嘘だからね』

 彼女が市川駿介とよりを戻すような、ふらふらした女性ではない。

『分かってる』

 澄春は迷わず言った。

『本当? 怒ってない?』
『怒るわけないだろ。千咲を信じてる』

 焦燥感にかられている千咲に、大丈夫だと伝え安心してもらう。

 本当は、怒っている。

 千咲に対してではなく、卑怯な真似をした犯人に対して。

 予定していた挨拶を終えた後は、交流会などの予定は全てキャンセルして、予定より早く帰社した。

 そしてすぐさま、正樹を呼び出した。

「見つかったか?」

 厳しい口調で問いかける。胸の内は焦燥感で溢れている。

「千咲さんに確認して写真の日時と現場がわかった。社内のカメラで該当の時間の階段室を使った人物を調べた」
「分かったのか?」

 アローフォワードでは、共有部分に監視カメラを設置している。

 特に地価駐車場に続く階段室は、防犯の為死角がないようにしていた。

「それが、千咲さんと市川以外は利用していない。恐らく隠し撮りをしていたのは市川だ」

 澄春の眉根が寄り、眉間に深いしわが刻まれた。

「千咲に嫌がらせをするためか?」

 千咲には言わなかったが、駿介が彼女を見る目は、敵を見るように鋭かった。

 その瞬間、嫌な感じがしたのだ。

 どんな関係なのか千咲に聞くと、以前交際しているとのことだった。

 千咲に昔の恋人がいる現実ですら不快なのに、よりによって昔の恋人を少しも尊重できないような男だとは。

「市川は今日無断欠勤をしているが、さっき事情を聞きに言った。証拠をつきつけて追及したら、白状したよ。隠し撮りをしたのも、暴露系インフルエンサーにタレコミをしたのも全て市川本人だそうだ」

 正樹の目に軽蔑の光が浮かぶ。
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