第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
「市川はそんな話を真に受けたのか?」

 澄春は駿介が馬鹿だとしか思えなかった。仮にも付き合っていたのなら、千咲の人柄くらい分からないのだろうか。

 彼女は絶対にそんな卑怯な真似はしない。

 社長夫人になっても権力を振りかざしたことはないし、相変わらず困った人に手を差し伸べている情が深い女性だ。

「彼女は幹部社員のうえ、澄春とも親しいと知られている。彼女の言うことなら信憑性があると思ったそうだ」

 澄春は胸を占める不快感に顔をしかめた。

 自分と凛華の関係が、嘘を信じさせることになったのだ。

「……凛華はなんて言ってる?」
「なにも知らない。関係ないと訴えている。それを聞いた市川はかなりショックを受けていた。彼は凛華の本性を知らないから、無理もないな。今頃、騙されたと後悔しているだろう」
「自業自得だ」

 澄春は少しも同情せずに言った。

 千咲に対して乱暴な真似をしたのだ。痛い目を見て当然だ。

「市川は解雇だ。法務と連携して進めてくれ。可能なら関連会社への再就職もできないようにしたい」

 同じ業界にいたら千咲と関わりができてしまうかもしれない。

 澄春は彼女と駿介に、二度と接点を持たせたくない。

「わかった。どっちにしろ今回の件を知ったら、彼を雇いたいと思う企業はないだろうな」
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