第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
「なにを話していたのか聞いたか?」
「そこまでは分からないって。でもなにかおかしいって印象に残ってたみたい」

 やはり凛華は無関係ではない。市川が言っていたことが真実なのだろう。

「今は証拠がないから何もできないが、凛華については引き続き調べている。彼女がどんな行動に出るか分からないから、千咲はなるべく関わらないようにしてほしい」

 凛華は危険だ。苛烈な性格のうえに、行動力もある。

「わかった、気をつける。でも、澄春さんも用心して」
「俺は大丈夫だ」
「でも、豊原さんは……」
「凛華がどうした?」
「ううん。多分私の勘違い。それより会社にはいつから行っていい?」
「明日から数日はリモート勤務にした方がいい。広報で対応しているけど、まだ完全に落ち着いたわけじゃないから」

 澄春は千咲をぎゅっと抱きしめた。

 マスカットの爽やかな香りが立ち上る。

 千咲の香りに澄春は気づけばすっかり馴染んでいた。

「……落ち着く」

 思わず零すと、千咲も「私もこうしてると安心する」と言い、澄春に更に体を寄せてきた。
 
 柔らかな体が与えてくれる温もりに、澄春の心は安らぎ、妻への愛情がこみ上げた。
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