第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
「さっきからずいぶん一方的ね。カメラに写っていたとしても証拠にはならないでしょ。あまりしつこいと名誉棄損で訴えるわよ」
「なにもないなら、どうして豊原さんが私の祖母のお見舞いにくるの? どう考えても不自然だわ」
 
 千咲は凛華を恐れて、決して関わりたくないと思っていた。けれど祖母を傷つけられたのだと思うと、そんなことは言ってられない。体の底から怒りがこみ上げ、力になる。

「お見舞いに来ちゃいけないの? 私の叔母が隣の部屋に入院しているのよ。あなたのおばさまと親しくなったようだから挨拶をしにきたのよ」

(隣の部屋が豊原さんの叔母?)

 千咲は動揺して口籠った。

 彼女が言うことが本当なら、監視カメラに映っていてもおかしくない。でもそんな偶然があるのだろうか。

 凛華が目を吊り上げて千咲を睨む。

「やっぱり許せないわ。楠木千咲。豊原家の優秀な弁護士があなたを訴えて裁判にするわ。私に恥をかかせた代償をしっかり払ってもらうわよ」

 弁護士という言葉が出た瞬間、千咲は頭から冷水をかけられたような気分になった。

 ただの一般児の千咲に、裁判なんて手に負えない。

 凛華が勢いづいたそのとき、電話を終えて戻ってきた澄春が、急ぎ千咲の前に立ちふさがった[直荒100]。
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