第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 千咲はごくりと息を飲んだ。

「……豊原さん」

 喉が詰まるような息苦しさを感じた。

(まさか豊原さんがおばあちゃんを……)

 強い怒りがこみ上げる。

 信じられない。なぜ関係のない人に対してこんな真似ができるのだろう。

 弱っている病人に刺激を与えるなんて危険すぎる。

 実際祖母は発作を起こしてしまった。

「澄春さん、豊原さんのところに行こう!」

 行って彼女と決着をつけなくては。絶対に祖母に謝罪をして反省して貰いたい。

 しかし澄春は浮かない顔だ。

「澄春さん?」
「凛華は認めないかもしれない」
「どうして?」

 千咲は驚愕の声を上げた。

「おばあさまの病室に入った決定的な証拠がない。服装が似ているというだけだ」
「……それなら、うまく誘導して自白させられないかな?」

 いくら隠そうとしても絶対にぼろが出るものだ。

「難しいと思う。凛華は狡猾で尻尾を出さない。前回市川が問題を起こしたときも、凛華が関わっていたはずなのに、なんの証拠も出なかった。市川ひとりが責任を取る形になったんだ」
「そんな……」

 凛華への怒り、悔しさが抑えようもないほどこみ上げる。

 炎のように燃え上がり、息も出来ないような苦しさを覚える。

「方法はなにもないの?」
「撃者を見つけられたらいいんだけど。それから同じことが起きないように、おばあさまの部屋に警備員を置けるか確認しよう」

 澄春はノートパソコンを閉じた。彼は警備を整えるために電話をするとのことなので、千咲は先に祖母の病室に戻った。

 祖母はまだ目を覚まさない。前島医師から大丈夫だと言われてはいるが、心配でたまらない。

 そのとき、ドアを叩く音がした。

 澄春がドアを開けると、驚くことに凛華が目の前に居た。

 彼女は目に鮮やかなワンピース姿で、その表情は自信に溢れている。

 千咲は息が詰まりそうな苦しさを覚えた。こみ上げる怒りを呑み込むためにきつく手を握る。

「豊原さん……何をしにきたんですか?」

 千咲は低い声を出した。凛華が薬と笑う。

「千咲さんのおばあさまが入院中と窺ったのでお見舞いに」
「白々しいこと言わないでください。昨日と同じようにおばあちゃんを攻撃しにきたんでしょ?」
「何を言ってるの? 千咲さん失礼すぎるわ」

 ふたりはにらみ合い膠着状況になる。

「昨日来て、おばあちゃんに写真を渡したのは、豊原さんですよね?」

 千咲は悔しさと共に言葉を吐き出した。

「違うわ。昨日はここに来ていないもの」
「……監視カメラを見ました。あなたが映っていました」

 凛華は唇を噛み締める。
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