第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 秘書室長の大沢正樹は水無瀬澄春の側近だ。

 澄春同様、千咲にとっては無縁で近寄り難い存在。そんな彼が千咲のところに来た理由はひとつしか思い浮かばない。

 千咲はごくりと息を飲む。

「楠木さん、社長室までお願いします」

 正樹が冷たい声で言った。

「わ、私が社長室にですか?」

 一社員が突然社長室に呼び出されるなんて滅多にないことだ。千咲は思わず上ずった声を出した。

「はい今すぐに」

 拒否は許されない空気が漂っている。お願いしますと言っているが命令だ。

 周囲の同僚たちも「なにごと?」と正樹と千咲に注目してざわざわしている。

(私こそ聞きたい! どういうことなの?)

 けれど、問いたせる雰囲気ではない。

 そのとき、彩香が目配せしていることに気が付いた。懸命になにかを訴えている。

 千咲は僅かに眉をひそめたが、次の瞬間はっとした。

(ベストマリアージュの件だ!)
 
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