第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました

 社長室は何とも言えない緊張感に包まれている。

 大きな窓を背にした重厚な執務机に着く澄春は、冷ややかな威厳を放ち千咲を見つめている。感情を読み取れない完全な無表情。

 千咲は今、猛獣を前にした小動物のごとく大きな不安に苛まれている。

「総務部の楠木千咲です。お呼びと窺い参りました」
「ああ」

 澄春は椅子から立ち上がりながら、応接セットに目を遣る。

「話をするから掛けてくれ」
「はい」

 千咲は指示通に従い、高価な革張りソファに腰を下ろした。

 澄春が正面に座ると空気がぴりっと締まった気がした。澄春の後ろに正樹が立ち、ますます物々しい雰囲気が溢れ出した。

「もう知っているかもしれないが、ベストマリアージュによる判定で、君が俺にとって最適の相手となった」

(やっぱりその件!)

 千咲はあたふたしながら口を開く。

「は、はい。私も先ほど知りました。でもなにかの間違いではないかと……」
「間違うわけがない」

 澄春の冷ややかな声が、千咲の言葉を遮った。

「ベストマリアージュのアルゴリズムは完璧だ。システムが選んだとうことは、俺たちは最適な結婚相手ということになる」

 ソファに背を預ける澄春は、悩まず結果を受け入れているようだ。ただ正樹の表情が曇ったことに千咲は気づいた。

 正樹はきっと、社長の相手が千咲という状況に納得できないでいるのだろう。

 無理もない。千咲だってそう思っている。

「俺はベストマリアージュの選択に従い、君と結婚したいと考えている」
「……へっ?」

 千咲は驚きのあまり、つい間の抜けた声を出してしまった。

(け、結婚? 付き合うとかじゃなくて?)
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