第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
(気合も入っちゃうよね)

 前日からローストチキンを仕込み、朝早くからケーキの準備をする。

 その合間に新しく購入したクリスマスツリーを飾る。

「うーん……このボールははどこがいいかな。別売りで買ったミニ靴下は雰囲気に合わなかったかも。自分のセンスに自信が持てない」

 ぶつぶつ言いながら飾りつけをしていると、ふいに小さな笑い声がした。

「……びっくりした。いつ帰ってきたの?」

 いつの間にか、後ろに立っていた澄春に、千咲は胸を抑えながら聞く。

「ツリーを箱から取り出したあたりから? 一生懸命飾りつけをしている様子が可愛くて声をかけられなかった」
「うそ! 五分以上は経ってるじゃない!」

 独り言も全て聞かれていたと思うと恥ずかしい。

 でも澄春に頭をぽんとして宥められると、単純だけれどすぐに機嫌がよくなってしまう。

「俺も一緒に飾っていい?」

 笑顔になった千咲に、澄春が笑って言う。

「もちろん、一緒にやろう!」

 澄春が高いところ、千咲が低いところと分担して作業を進める。

「できた!」

 千咲がリビングの電気を消すと、金の輝きを纏ったツリーが存在感を放った。

「いい感じ」

 満足する千咲に、澄春が微笑む。

「ずいぶん大きなツリーにしたんだな」
「うん。子供の頃から大きなツリーに憧れがあって。これから毎年一緒に飾れたらいいな」
「俺はツリーを飾ったことがなかったけど、幸せを感じるものだな。毎年一緒に飾ろう。家族が増えたらみんなで」
「今から楽しみだよ」

 千咲は澄春の首に腕を回して抱き着いた。

 いつもなら照れてしまう行為だが、クリスマスで気分が盛り上がっているからだろか。もっと甘えて触れ合いたくなる。

 澄春も千咲の腰をぐっと抱き寄せた。

 どちらからともなくキスが始まる。

 深くて甘い、うっとりするようなキスが続く。

「千咲……」

 千咲は彼に名前を呼ばれるのが好きだ。

「愛してる。千咲に出会えて心からよかった」

 言葉と共に唇を深く塞がれる。

 千咲の思考はたちまち溶けていき、澄春への想いでいっぱいになる。

「私も澄春さんが好き。こんなに好きになるなんて思わなかった」

 マッチングサービスで始まった関係だった。結婚を望むのすら誰かの為だった。初めはおそるおそる距離を測り、不安でいっぱいのときもあった。

 けれど今は心から彼を愛している。

(私は、澄春さんじゃなくちゃだめ)

 片時も離れたくなくて、口内の奥深くまで繋がり、求めあう。

 深いキスが解けると、澄春は千咲を抱き上げて、ベッドに運ぶ。
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