第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 焦燥感がこみ上げるが、同時に情けなくなった。

 いくら焦っても、都合よく相手が見つかるはずがないのだ。

 千咲は深くため息を吐いた。

 脳裡を過るのは、冷ややかな美貌。感情の浮かばない視線が、千咲の内面を見透かすように貫いていた。  

(うっ、思い出すだけで怖い) 

 でも千咲と結婚してくれる相手は、水無瀬澄春しかいない。

(……やっぱりもう少し考えてみよう)

 その夜、千咲は悩み過ぎて、なかなか寝付けなかった。  

 翌日の午後。千咲は再び社長室で澄春と対面した。今日は正樹の姿はない。

 寝不足でクマが目立つ千咲とは対照的に、澄春は今日も輝いていた。

「結論は出たか?」

 澄春の冷たい視線を向けられて、千咲の心臓がきゅっと締め付けられるように痛み、冷静さがどこかに飛んで行った。。

「じ、実は急な話でまだ結論を出せていないんです」

 散々迷っていたのにいざとなると取り繕うことができず、結局正直な発言をしてしまう。

 自分でも優柔不断だと感じる態度だから、澄春はかなり不快だろうと思ったが、彼は顔をしかめることもなく淡々と返した。

「迷っている理由は?」

「その……早く結婚はしたいと思ってるんですけど、水無瀬社長のことをなにも知りません」
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