第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
二章 完璧な相性のふたり
祖母を見舞ってから一週間後後。澄春が計画した婚姻届け提出の日が訪れた。
千咲は当初ひとりで提出に行くことになるだろうと思っていた。澄春は多忙だし、ふたりで仲良く窓口に行くというイメージがまったくなかったから。
しかし澄春は当然のように、ふたりで役所に向かう計画を立てていた。
澄春が朝千咲のアパートまで迎えに来て手続きに行き、その後引っ越し作業をするという流れだ。
千咲のアパートから役所までは車で二十分程で到着する。その程度の時間でも、車内という密室でふたりという環境は千咲にとってプレッシャーがある。
無言で気まずいが、適当な話題が見つからないのだ。
しかもこれから婚姻届けを出すと思うと、ますます緊張感が高まり、助手席に座る千咲は膝の上の手にぎゅっと力を入れていた。
そんな中、無言を破り澄春の声がした。
「緊張しているのか?」
「えっ?」
突然話しかけられて、千咲の肩がびくりと跳ねた。
「は、はい……少し緊張しています。婚姻届けの提出なんて、滅多にないことなので」
緊張と大げさな反応をしてしまった気恥しさもあり、千咲は微妙な笑みを浮かべた。
澄春はそんな千咲を一瞥もしない。
「水無瀬社長は緊張していませんか?」
「ただの手続きだからな」
会話が続かない気まずさから無理やりした質問は、短く即答されて終了した。
なんて温度を感じない冷たい返事なのだろう。
(手続きって、仕事じゃないんだから……)
千咲は「そうですね」と相槌を打ちながらも、なんだかがっかりした。
話題を探す気力を失い、千咲は再び黙り込む。
ところが意外なことに、澄春が話しかけてきた。
「そろそろ呼び方を変えよう」
突然話題が飛んだ。
「呼び方ですか?」
千咲は戸惑い瞬きをしながら、彼の冷ややかな横顔を見つめた。
赤信号で停車をすると、澄春はようやく隣の千咲に目を向けた。