第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 恐縮するふたりに別れを告げて、千咲は急ぎエレベーターホールに向かった。

 結局、遅刻ぎりぎりになってしまった。

 ロビーの時計に目を遣り時間を確認する。

(よかった、走れば間に合う)

 しかしほっとした直後、誰かに思い切りぶつかってしまった。

「きゃっ!」

 直後、驚いたような女性の声がする。

 千咲はさっと血の気が引くのを感じた。

「すみません!」

 ぶつかったのは、アローフォワードの社員である豊原凛華(とよはらりんか)だった。

 彼女は、社内では知らない人がいない有名人。非常に華やかな経歴の持ち主だ。

 大学在学中に自身が率いるチームがプログラミングコンテストで優勝し、卒業後は企業からのオファーが殺到したらしい。そのうえ容姿端麗で、実家は資産家。

 アローフォワードには開発設計部長の待遇で、昨年中途入社した。

 ベストマリアージュの開発にも、凛華は深く関わっていると聞いている。

 一部では澄春の女性版とまで言われている。社内の噂をあまり気にしない千咲ですら、彼女についての話題は何度も耳にした。
 その噂の中に、凛華はとても気難しい性格で怒らすと大変だというのもあった。

 千咲はそのとき、彼女に会ったときは気をつけようと思った。
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