第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 彼は夫婦仲を良好に保とうとしているがようだが、公私混同はしなそうだ。

 豊原凛華と揉めたと訴えたとしても、彼女を注意するのではなく「辛いなら辞めたらいい。俺が養う」と言いそうな気がする。

 開発設計部のエリート部長と、総務部の一般社員。会社として、どちらを選ぶかは誰だって分かる。

「迷惑かけたくないから、豊原さんとは関わらないようにするよ」

 幸い仕事のやり取りはない。社内の共有部分に行くとき、気をつけらたら大丈夫だろう。

(豊原さんのことはもう気にしないようにしよう)

 そもそもまだ、悩みを相談できるような関係になってないのだし。

(今日は家飲みでもして、気分転換しようかな)

 しかし、今日に限って澄春が残業せずに帰ってきた。

「え? 今日早くないですか?」
「戻らない方がよかったか?」

 驚く千咲に、澄春が冷ややかな目を向ける。

「まさか! ただ、遅くなると思ったので、買い物をしていなくて……私はおつまみみたいなもので済ませようと思ってたので」

 千咲は慌てて否定した。ひとり飲みをしようとしていたことは秘密だ。

「夕飯抜きにする気だったのか?」

 澄春が意外そうに眉を上げた。

「ダイエットしてるのか?」
「ち、違いますよ。ただあまりお腹が空いてなかったので」
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