第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 澄春が僅かに首を傾げる。

「そうですよ。いつも全然笑わないじゃないですか」
「俺はそんなに無表情か?」
「もしかして自覚がないんですか?」
「気にしたことがない」

 千咲はちょと笑ってしまった。

「そういうところ、澄春さんらしいですね」
「俺らしい?」
「我が道を行く感じが。いい意味ですよ」
「褒められてるのか?」
「はい、褒めてます」
「……そうか」

 その夜、千咲と澄春は初めて長い会話が成立した。

(意外と楽しかったかも)

 千咲は澄春との距離が、少しだけ近くなった気がしたのだった。

 祖母は新しい治療方法が効果を発揮しているようで、お見舞いに行く度に、顔色がよくなっている。

 その日、千咲が仕事帰りに病院に寄ると、祖母の機嫌がとてもよかった。

「ちーちゃん、澄春くんは本当によい子ね」
「え?」

(……よい子?)

 澄春とはあまりに結びつかない言葉だ。千咲は怪訝な気持ちになる。

「どこがよい子なの?」
「優しくて思いやりがあるもの。澄春くんがちーちゃんの旦那さんで本当によかったと思ってるのよ」

 優しい、思いやりがある。どちらも柔らかなイメージで、冷酷社長や氷の男と呼ばれるような人物からは程遠い。
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