第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
 千咲はちょっと遠慮して答える。すると澄春は当たり前のように言った。

「部屋を取ってあるから行こう」
「……え?」

 その瞬間、千咲は石化した。

(部屋を取ったって……このホテルに泊まっていくの?)

 結婚を公表したから、次のステップに移る。

 つまり初夜を迎えるということだろうか。

(聞いてないんですけど!)

 そういった行為は、お互いに慣れてからにしようという話だったはずだ。

 澄春も関心がなさそうで、同じ寝室で過ごしても、色っぽい雰囲気になったことはない。

 だから千咲はまったく危機感を持たずに、これといって意識しないでのん気に日々を過ごしていた。

(でももう一カ月経つし、節目でもある……)

 千咲は激しく動揺しながらも、拒否はできずに澄春の後についてエレベーターに乗り込んで、一気に高層階に上がった。

 エレベーターを降りて案内されたのは、千咲がこれまで入ったことすらないスイートルームだった。

 千咲にとってホテルといえば、ワンフロアにバストイレがついている、ひとり暮らし用のマンションと大差がないイメージだった。しかしこの部屋はとにかく広くて、どこもかしこも豪華だ。ダイナミックに広がる夜景は別世界のよう。

 ロマンチックというのはこういうことを言うのだろう。
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