恋煩いの処方箋
5.楽しい日曜日
5.楽しい日曜日

 東の空が明るくなり始める頃、隣で寝息を立てている娘を起こさないようにベッドからぬけだす。キッチンの明かりだけつけて、お米を研ぎ炊飯のスイッチを入れると冷蔵庫から昨日下味を付けておいた鶏肉を取り出した。
今日は大和と三人で出掛ける予定になっている。行き先は隣県の海沿いにある大きな水族館だ。保育園の遠足で以前行ったきり、これで二度目になる。もちろん和花のリクエストだ。私だけではなかなか連れて行けない場所だから、大和に了承してもらえて本当によかった。
 朝八時に迎えに来てくれることになっているので、それまでにお弁当をつくり、和花を起こして朝食を食べさせて、いつもよりオシャレをしようと思っている。
もうだいぶ気温も高いので、親子でお揃いのワンピースを着るつもりだ。
ご飯が炊けるまでに、唐揚げを揚げて、卵焼きを作る。味は甘め。飾り包丁をいれたウインナーとちくわに胡瓜とチーズを詰めたもの、ミニトマトにブロッコリー、カボチャとクリームチーズの和物。それからオレンジとキウイ、シャインマスカットも詰める。おにぎりの具は、シャケと梅干し、昆布と焼いた明太子。たくさん握った。
お手拭きと水筒にお茶、割り箸と紙皿。レジャーシートも忘れずに。長年保育園の運動会や遠足で培ったお弁当スキルを惜しみなく投入する。
 最初は母に手伝ってもっていたけれど、自分ひとりで作れるようになったのだ。なんの変哲もないお弁当だけど、一周回ってこれがいい。そう大和に思ってもらえたらうれしい。
保冷バッグにお弁当を詰めて、荷物をまとめておいておく。
片付けをしながら、コーヒーを飲んでホッとひと息つく。
そろそろ和花を起こそうと思っていると、「おはよー」と起きてくる。
「おはよう、のんちゃん。ひとりで起きたのえらいね」
「あたりまえでしょー! 今日は水族館だよ、ママ」
 毎日こうならいいのだけれど、と思ってしまう。寝起きの悪い和花との闘いは悩みの種だったりする。
和花はひとりで顔を洗って着替えを始める。
「ママ、これ着るんでしょ?」
 ハンガーにかけてあるサックスブルーのワンピースを指差す。
「そうよーでも先に朝ごはん食べようね」
「わかった」
万が一汚してしまわないように最新の注意を払う。
「先生、ちゃんと起きたかな?」
「起きてるよ、大丈夫」
 さっき、おはようのメッセージが届いた。どうせなら朝食も誘えばよかったなと思うけれど、寝起きの顔を見せる勇気はまだない。
おにぎりと、のこったから揚げをつまみながらテレビで天気予報をチェックする。今日は晴れるみたいだ。

 
< 26 / 61 >

この作品をシェア

pagetop