恋煩いの処方箋

「……俺。がまん強い方なんだけど、今はダメだって分かってるんだけど、亜子に触れたら堪らなくなるんだ」
 苦しそうな表情でそんなことを言う。私は答えに困ってしまう。
「私も同じ気持ちだよ。大和にもっと触れて欲しい……でも、今日は……」
 隣の部屋で和花が寝ているし、流れに身を任せて過ちを繰り返すわけにはいかない。
「そうだよな、わかってる」
大和は体を起こすと、私の手を引いて起こしてくれる。途端に気恥ずかしくなって、ふたり揃って苦笑いを浮かべる。
「そろそろ帰るよ」
 自分に言い聞かせるみたいに大和は言う。
「うん。今日はいろいろと本当にありがとう」
「こちらこそ、美味しい夕飯ありがとな」
 和花の寝顔をみて、大和は帰り支度を始める。もっと一緒にいたい。そんな気持ちをひた隠しにして、大和を見送りに行く。
「ここでいいよ。のんちゃん起きるかもだし」
 玄関先で大和は言う。
「うん、ありがとう。気をつけて帰ってね。ゆっくり休んで明日からお仕事がんばって。ちゃんと食べて休める時に休んで、それからええと……」
「わかったよ、亜子。帰りたくなくなるからもう行くね」
 困った顔の大和に「ごめん」と謝る。すると私の頭をくしゃくしゃに撫でる。愛おしさが溢れてくる。
「あやまらなくていいよ。会いたくなったらいつでも呼んで。すぐ駆けつける。遠慮はしないこと、わかった?」
「わかった」
「よし、じゃあ俺帰るわ。おやすみ」
大和は私の額に唇を落とす。
「おやすみなさい」
 私は彼の背中を笑顔で見送った。また会える日を楽しみにしながら。


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