恋煩いの処方箋

「待たせてごめん」
 大和が戻ってくる。倒れた人は念のため病院へ向かうらしいが、重症ではないという。私はほっと胸を撫で下ろす。
「先生が助けたの? すごぉい!」
 まるでヒーローでも見るように目を輝かせて和花が聞く。大和は膝を折ってしゃがむと、
「のんちゃん、あのね。先生は命を助けるお手伝いをしただけ。あとは救急隊の人たちが病院まで運んでくれる。病院ではお医者さんが診察をする。こうしてみんなで患者さんを助けているんだよ。わかった?」
 カッコつけるでもなく、社会の仕組みを教えてくれる。
「わかった! のんも先生みたいになりたいな」
「お、いいね。のんちゃんならなれるよ」
 和花が大和のようになってくれたら嬉しい。有馬家は代々医者の家系だ。大和のお父さんにも喜んでもらえるだろうーーなんて考えてみたけれど、将来どんな職に就こうと和花は和花だ。大切な私の娘であることに変わりはない。彼女が幸せであれば、正直医者にならなくったっていい。でも、もしそうであればいいな。
 それから館内を余すことなく見て回り、最後にお土産を見にいく。大人になってもぬいぐるみやカラフルなグッズに心が躍る。いろいろな貝が詰め合せになったものを小さな頃に買ってもらった記憶がある。
「のんこれ買いたい!」
 和花が選んだイルカのキーホルダーを三つ。祖父母にはデフォルメされた魚のクッキーを買った。
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